僕らに最後にふるまわれたのはおでんだった。
これを食べたら、僕らは旅立たねばならない。それが古くからの決まりであり、僕らの契約だった。
蒟蒻・がんも・鳴門巻の串を受け取り、僕らはそれを一気に、あるいはいとおしみながら食べる。
僕らはどこへ行こうか。
北へ向かえば寒さが厳しい。
南へ向かえば暑さが厳しい。
西に向かえば夕日が眩しい。
やはり東しかない。
東へ行こう。
東へ行こう。
日が昇る希望の方角に歩こう。
どこまでもどこまでも東に歩こう。
たとえ、西に歩いた場合と行き着く先が同じでも。
それでも東に歩こう。
つかみ取るべき希望は目的地ではなく方角にこそあるのだから。
(遠野秋彦・作 ©2009 TOHNO, Akihiko)
★★ 遠野秋彦の他作品はここから!